
製造現場の品質維持において、トラブルを未然に防ぐことは重要な要素です。本記事では、将来のリスクを予測して対策を打つ「未然防止」の基礎知識や、再発防止との違いを詳しく解説します。未然防止に取り組むメリットや失敗しがちな理由、「QCストーリー」を用いた具体的な実践手順も解説するので、ぜひ参考にしてください。
未然防止とは
未然防止とは、今後起こり得るリスクを予測し、トラブルや事故を防ぐ取り組みのことです。単に目の前の問題に対処するのではなく、リスクの原因を根本から取り除く活動を指します。
未然防止の取り組みは、不良品の削減や品質の安定化につながり、企業全体にプラスの影響をもたらします。
再発防止との違い
未然防止が将来のリスクに対して先手を打つ活動なのに対し、再発防止はすでに起きたトラブルの原因を突き止め、同じことを繰り返さないよう対策することを指します。
つまり、対策を講じるタイミングが「問題が起きる前」か「問題が起きた後」かという点が大きな違いです。
両者とも品質管理には欠かせない考え方であり、製造現場では2つを組み合わせて運用する場合が多いでしょう。
未然防止のメリット
企業が未然防止に取り組むと以下の3つのメリットを期待できます。どのメリットも企業活動を続ける上で重要な要素です。
顧客からの信頼性が向上する
未然防止は、顧客の信頼を保ち、ブランド力を向上させるために不可欠な取り組みです。製造過程のトラブルにより事故やリコールが起きれば、多額の費用が発生するだけでなく、これまで築き上げてきた企業イメージも一気に崩れかねません。
未然防止の活動により、安心・安全な商品を提供し続けることが、顧客との信頼関係の構築につながります。
後追い対応を削減できる
トラブルを未然に防ぐことで、余計な時間やコストをかけずに済む点もメリットです。
実際に問題が起きてからの「後追い対応」には、原因の究明や対策などに膨大な労力が必要です。あらかじめ未然防止に取り組んでおけば、後追い対応に振り回されることがなくなり、より生産的な活動にリソースを充てられます。
従業員の主体性やモチベーションが高まる
未然防止の取り組みは、製造現場における「ささいな違和感」に気付くことから始まります。そのため、未然防止には従業員の主体性が不可欠であり、これにより自分たちで課題を見つけ、改善しようとする姿勢が育まれます。
また、トラブル対応の負担が減ることで、より重要な仕事に集中しやすくなると、仕事に対する意欲も自然と高まるでしょう。
未然防止が定着しにくい背景
未然防止が定着しない背景には、「問題が起きてから対応する」という事後処理の考えが根強く、予防の重要性が正しく理解されていないことがあります。目に見える問題がない平時には、予防の必要性を感じにくく、日々の忙しさに紛れて対策が後回しにされがちです。
また、未然防止には多くの時間やコストがかかりますが、こうした先行投資の意識が根付いていない企業が少なくありません。
さらに、リスクを予測するには高度な専門知識や経験が必要なため、人材不足により具体的な仕組みづくりが難しいケースも多いでしょう。
未然防止を実現する基本ステップ
未然防止は将来的なリスクを低減するための取り組みですが、何も問題が起きていない状況でトラブルを想定するのは困難です。そのため、未然防止は「緊急対応・再発防止・未然防止」の順に取り組むケースが一般的です。ここでは未然防止の基本ステップを解説します。
1. 緊急対応
はじめに、トラブルを素早く収束させる「緊急対応」に取り組みます。緊急対応の目的は、トラブルの拡大を食い止め、影響を最小限に抑えることです。そのため、緊急対応では迅速さだけでなく、事実を正確につかむことが欠かせません。思い込みを排除し、何が起きたのかを正確に把握する必要があります。
2. 再発防止
緊急対応によりトラブルが落ち着いたら、「再発防止」に取り組みます。同じトラブルを二度と起こさないよう、根本的な原因を突き止め、具体的な対策を立てます。立案した防止策を、誰が・いつまでに行うかを明確にすることも大切です。また、対策の実施後は効果を検証し、不十分な場合は追加の対策を検討します。
3. 未然防止
再発防止を実施したら、本題である「未然防止」の段階に入ります。実際に起きたトラブルを分析することで、将来起こり得る類似のリスクに気づきやすくなります。トラブルの内容を一般化し、同じ原因によるリスクに備えられるよう、仕組みを整えることが重要です。想定されるリスクが複数ある場合は、優先度の高いものから対策しましょう。
未然防止型QCストーリーを使った進め方
QCストーリーとは、品質上の問題を解決するためのプロセスです。この流れに沿うことで、重要なポイントの漏れがないよう改善を進められます。
QCストーリーのなかでも「未然防止型QCストーリー」は、将来のリスクを防ぐための具体的な実践方法をまとめたものです。ここからは、未然防止型QCストーリーを使った未然防止の進め方を解説します。
1. 問題を定義する
まずは、どのリスクを優先的に防ぐべきか問題を定義します。製造現場にはさまざまな問題が潜んでおり、どのテーマを選択するかが、未然防止活動の成果を左右します。過去のトラブル事例や緊急対応の記録など、日頃から蓄積した現場データを分析し、未然防止の効果が高いテーマを絞り込みましょう。
2. 目標を設定する
問題を定義したら、現状を正しく把握するとともに、未然防止活動における目標を立てます。
目標設定では、以下の3つの要素を具体化することが大切です。
・何を
・いつまでに
・どの程度まで
「不良品率を◯%まで下げる」など、定量的な目標を設定すると、その後の活動スケジュールがより計画しやすくなります。
3. 担当者と実施スケジュールを設定する
次に、各タスクの担当者を決め、目標期日までに完遂できるような計画を立てます。決められたフォーマットはありませんが、ガントチャートなどを用いて作成する場合が多いでしょう。
また、担当者の割り振りは、スキルや経験を考慮して選ぶことが大切です。それぞれの専門知識を生かすことで、より効果的な対策が可能となります。
4. 根本原因を究明する
次に、問題を引き起こしている原因を突き止めます。表面的な事象だけで判断せず、「なぜ」を繰り返しながら、根本原因を掘り下げることが大切です。
なお、原因を究明する際は、「人(作業者)」に原因があるという結論に行きつかないよう注意が必要です。人に原因を求めるのではなく、製造現場の「仕組み」の部分に問題がないか深掘りしましょう。
5. 未然防止策を立案・実施する
根本原因を特定したら、具体的な未然防止策を立案します。このとき、現場や作業者に無理な負担を強いないような案にすることが大切です。また、過去に成果が表れた防止策を取り入れると効率的です。具体策が決まったら、チーム全体で内容を共有し、実行に移しましょう。
6. 未然防止策の効果を検証する
未然防止策は実施して終わりではなく、期待通りの結果につながっているかを必ず確かめましょう。具体的には、トラブルや作業ミスの件数などのデータを集め、実施前の数値と比べます。思うような成果が出ていない場合は、もう一度原因を調べ直し、内容を修正したり別の手段を加えたりして改善しましょう。
7. 未然防止策を標準化する
効果が確認できた未然防止策は、標準化を図りましょう。標準化にあたっては「誰が担当しても」「時間が経っても」同じ結果が出せる仕組みづくりが大切です。
そのためには、QC工程表やSOPなどの作業手順書を作成する必要があります。わかりやすい作業手順書があると、誰もが未然防止策を正しく実施できるようになり、スムーズな定着が促されます。
8. 活動内容を振り返り、改善する
未然防止活動は一度で終わりではなく、定期的に改善を繰り返すことが大切です。
活動内容と効果を振り返り、得られた知見や改善点を整理しましょう。この振り返りのプロセスにより、次回の未然防止活動の精度が高まります。新たな課題が見つかった場合は、次の未然防止活動に組み込み、より高いレベルでの改善を目指しましょう。
まとめ

未然防止は、将来的なリスクの回避、ひいては顧客満足度の向上や組織の活性化をもたらす活動です。未然防止を成功させるためには、緊急対応から再発防止に取り組みましょう。まずは身近なリスクの発見から始め、持続的な品質改善を目指すことが重要です。
製造現場における未然防止に取り組むなら、「CHECKROID」をご活用ください。点検表のデジタル化により記入ミスや転記ミスを防ぎ、作業の効率化と品質向上を実現します。直感的な操作感で、デジタル機器に不慣れな作業者も安心です。
まずはお気軽にお問い合わせください。より詳細な情報を知りたい場合は、資料を無料でダウンロードしていただけます。
